【書評】ストレスに負けない生活(著・熊野弘昭 2007年・ちくま新書)

ストレス 対策 書評

みなさんこんにちは。

ご覧いただきありがとうございます。

無職になってからというもの、ストレスと無縁の生活を送っている私です。

ですが、働いているころ(特に新入社員の頃)はやたら肩や首が凝ったり

あるいはお腹のあたりに謎の痛みを感じたりして(病院行けよ)、

休日に「気分転換に遠出しよう!」と遠出をしたら

今度は旅先で無数のアパートが目に入ったりして(※参照

「ああ、明日は仕事か…この土地にも同じように仕事で苦悩している人がいるんだろうか

と気分転換が逆にストレスを呼び起こすなど大変な時期もありました。(やばい!)

さかのぼると学生の頃も、体育の授業でほかの友達の足を引っ張ったりすると朝布団から出られなかったり面白いと思ったことがウケなかったりすると

「さっきスベったこと、もしや俺がいないところで馬鹿にされているのでは…」

と一日中気が重いこともありました。

このように「ストレスに弱い人選手権」があれば少なくとも地区の代表を争えるくらいには自信がある私ですが、おそらくみなさん、それなりにストレスには悩まされているのではないでしょうか。

僕自身も冒頭で「ストレスとは無縁ですよフフフ」なんて余裕をかましていましたが、迫りくる転職(再就職)活動や、それに伴うタスクによるストレスですぐに圧倒されることは目に見えています。

ここは何か自分としても対策をしないといけません。

そこで、そもそもストレスとはなんなのか?

この本を足掛かりにしていっしょに考えてみましょう。

ストレスは三種類に分けられる

ストレス。

嫌な響きです。スアレスならいいのに(注1)

それはさておき、この本によればストレスは大きく三つにわけられます。

ストレスの種類

1. ストレスそのもの … 上の例でいえば「仕事がつらい」「みんなの前で滑った」こと。(ストレッサーとも言われる)

2. ストレス … 1によって起こった何らかの変化。上の例でいえば「明日も仕事か…」みたいな思考が浮かぶなど

3. ストレス反応  … 上の例でいう「肩こり」「朝、布団から出られない」など

これらを分けて考えることはとても大事です。

なぜなら対処の方法が異なるからです。

今回の本では主に2番と3番に対する対処を紹介してくれます。

逆に、1番に対する対処は本書では「対処がなかなか難しい」として扱いません。(※2)

ストレス反応に旅は効くのか?

「最近仕事で悩んでまして、ストレスが…」と相談するとだいたい、

温泉にでも行け」とか「海でも見に行け」というアドバイスをされることが多いと思いますが、

要は「リフレッシュしてきな」という事に本旨があると思われます。

効果があるようなないような…というところですが、

こういったアドバイスにはどのくらい効果があるのでしょうか。

それを考えるにあたって、本書では「リラクセーション」という状態を紹介しています。

この状態は「ストレス状態とは真逆の状態」と定義されます。

この状態に入ると、肩こりが改善されたり、元気が出てきて「よっしゃ、やるか」という状態に戻ることができるそうです。要はストレス状態が改善されるのです。

ただ、面倒なのはこの「リラクセーション状態」はただぼーっとしているだけでは入れません。

その意味で、上記のアドバイスは「リラクセーション状態」に入るためのアドバイスである、と言い換えることが出来ます。

しかし、最初の自分のように「旅先で仕事関連のものを見て逆に気が滅入った」とか、あるいは「良かれと思って一日寝てたら逆に悪化した」とか、そういう事もあるでしょう。

そこで本書では、著者がお医者さんとして活動される中で効果のあった方法がいくつか紹介されています。

詳しくは本書を見てほしいのですが、一つだけ紹介すると、「呼吸の数を数える」という方法です。

仏教では「数息観」といって昔からある修行法らしいのですが、試してみると座禅をくまずとも 確かに気持ちが落ち着いてきて、リラックスできます。

少し「やべえな」と思ったら、トイレなどに行って試してみるといいかもしれません。

また、リラックスにはある種の「貯金」が可能とのことです。

信号待ちやお風呂に入る前などに試してみるといいかもしれません。

僕もせいぜい無職のうちにリラックスしておこうと思います

ストレスそのものにはどう対処する?

ストレス反応については上記の通りですが、

例えば上記の「スベったことが気になる」で言えば、今度は「何か話してもまたスベりそうでやだ」とか、

仕事の例で言えばリラックスしても「そもそも仕事がきついから永遠にストレス反応が出続ける」という問題は残されてます。

こちらに関してもいくつか紹介されています。

「段階に分けたあと、予想される困難度の点数(主観的なものでOK)をつけて、60点以下であればやってみる」など、主に行動療法をメインに紹介されています。

困難は分割せよというやつです。

個人的な経験に照らしてみると、入社当時の僕は大家さんの新規開拓(※3)が本当に苦手で、「行け!」と言われる度に悶絶してました。

これはもう本当に嫌で、訪問するお宅の前で1時間近く悩んで、そのうち頭が痛くなってきて結局何もできなかったという日もありました。

ただ、行かないわけにもいかないので「今日は家の前まで行ければいいや」「今日は呼び鈴だけ鳴らせればいい(会えなくてもOK)」「今日は名刺だけ渡せればいい(いくら挙動不審になってもいい)」と分割してやっていくうちに、いつの間にか「こんなこと出来るわけないだろ」から「意外となんとかなる」となり、いつしか新規開拓が(好きという訳ではありませんが)そこそこ得意になっていました。

ただ、「いきなり行動するのもなぁ…」「上司が嫌な奴など行動どころじゃない問題にはどうすればいい?」という人にはまず「ノートに状況や思考、感情を書き出してみる」という「セルフモニタリング」の手法も少しですが紹介されています。ただ書き出すのではなく、特定の書式に従って書き出すことでフッと気持ちが楽になることがあります。まずはこちらから入るといいかもしれません。

セルフモニタリングに興味がある方は、伊藤絵美さんの「自分でできるスキーマ療法ワークブック part1」、あるいはデビッド・D.バーンズ「いやな気分よさようなら(コンパクト版)」(ともに星和書店)の2冊がよくまとまっていておすすめです。
スッと気持ちが軽くなることもあれば、じわじわと継続しているうちに楽になってくることもあります。(そのうちまとめるかも)

本書の感想

著者が早稲田大学の教授なので、統計データや脳の専門用語が出てきてちょっと読み進めづらいところもあるのですが、「ストレス」というものの全体像をつかむにはいいです。

この手の本は割とデータの裏付けや根拠がないものも多いのですが、この本はしっかりしています。

ほかにも「身体のコリ・硬さの傾向が性格と関係がある(かも)」という記述があり、

時たま聞くヨガやストレッチで性格がよくなった!という言説にもそれなりに説得力があるのかなぁ?と思いました。

少し古い本なのと、どちらかというと「ストレスを概観する」ことが主眼になっているため、リラクセーション状態に入るための技法の紹介や、認知行動療法の本格的な紹介というよりは、総花的な紹介になっているのがちょっと残念ですが、それは仕方ないですね。

読み物としても面白いですが、本格的に「ストレスに負けない」ためには実践が必要です。

僕も日々試してみたいと思います。

ではまた。

(注1)メジャーリーグのピッチャー。ソフトバンクー阪神ーサンディエゴ・パドレス。ベネズエラの草野球選手から屈指のクローザー(最終回に投げる人のこと)にのし上がるという、一度はみんな妄想したサクセスストーリーの体現者。阪神時代は1イニング平均で1人の走者も許さなかったようなので阪神ファンはさぞノンストレスだっただろう

(注2)この辺はビジネススキルやタスク管理に習熟することである程度改善が可能かと思いました。まぁ、人間関係の問題やガチのトラブルだと少し難しいのですが…

(注3)これまで付き合いのない大家さんに飛び込みで「アパートを紹介させてくれませんか」とお願いに行く仕事。業界用語だと物上(ぶつあげ)や物調(ぶっちょう)なんて呼ばれる

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